初稿:2012年1月29日
改訂2: 2012年3月7日
複写物ではダメな戸籍抄本や住民票などの証明書類や、コンサートチケットのような換金性の高い印刷物などで見かける複写抑止の仕組み(地紋と称するらしい)を自分が利用できる普通のプリンタで作成(印刷)する実験をしてみました。
浮き上がらせる部分とそれ以外とで平均的な濃度を揃えておきながら点の大きさや、線の濃さと間隔を違えることで原本では見え難く、複写したらそれらの違いがくっきりと現れるように調整するのが基本原理です。グレー領域とメッシュ領域とが同じように見えるように調整するディスプレイの簡易的なガンマ調整(例:右図)などでもお馴染みの理屈です。
地紋が出ないようにスキャン(および印刷)することも現実には可能なのですが、気軽な複写を心理的に抑止する方法としては有効です。高価な地紋用紙では複写機で読み取りにくい蛍光インクを併用したりして複写がより困難にされていたりします(紙幣もその一例)。
地紋に関連する情報例は以下の通り。
原理は先に書いた通りなので、濃度調整などを試行錯誤すれば良いだけですが、上記リストにある「コピー防止印刷(地紋+白抜き)」のページが分かり易いので、それに準じて作成・検討をしてみました。
概ね、実験する前から分かっていた通りですが…
MS Word 2003で簡単に設定できる灰色(グレイ)の濃度パターンが25%、40%、50%、80%と、塗りつぶしパターンで設定できる濃度5%、10%、20%、25%、…、90%や、斜め線や市松模様類との組み合わせから、平均濃度が一致し、且つ模様が目立たないものを見つける作業から開始です。
ドットでの濃度調整の場合、理屈上は元の色の濃さとパターン濃度の積が、それとは異なる色(またはパターン)との濃度に近い組み合わせを選ぶことで絞り込めます。その他のパターンの場合は具体的な濃度として設定されておらず、使用するプリンタ&解像度設定によって濃度が大きく変化しますので、やってみなければわからない状態です。濃度とは別に、パターンとしての目立ち難さはドット、ライン(縦・横・斜め・格子)およびそれに準ずるものと思われます。
実際に試した範囲ではドット網および斜線が比較的安定して良好でした。私が所有するインクジェット複合機Officejet Pro 8500 wireless All-in-One(以後OJP8500と記す)では、周囲:灰色25%、パターン:灰色50%&白色のドット網25%や、パターン:灰色50%&白色の斜め線(対角線)が比較的良好でした。もちろんインク量セーブモードでは濃度差が変化して地紋が最初から見える状態になったり、複写しても地紋が薄すぎたりして用を成さなかったりするので注意が必要です。


実際に地紋を作成・印刷し、複写した結果の事例を以下に示します。
試作を経て出来上がったファイルを雛形として保存しておき、随時本文を書き換えて使うやり方でも、地紋パターン部分が少量だったり地紋の変更頻度が低い用途ならば実用性があると思いますが、そうでない場合には若干手間です。
そこで自動化を試みました。といっても今回の目標が作ってみるという程度なのと、WordのVBAマクロに精通していないこともあって1ページ分だけ地紋を生成するだけのものです。いろいろ凝った機能も思いつくのですが現時点では実装していません。地紋として2行分の文字列を任意に指定できるというだけのものです。厳密なエラー対策なども施してありません。





検討事項:
自動化としては背景濃度、パターン選択、パターン濃度などの設定ができるダイアログを追加すれば、出力するプリンタに応じて随時設定ができてよいと思います。その機能の追加はわずかな手間で可能です(私にとっては、わざわざ作りこむほど利用するものでもないので今回はしませんが)。

補足:
上記OJP8500&DJ720Cの結果に追加して、少し古いモノクロレーザープリンタ(Canon LASER SHOT LBP-840)でドットと斜め線のパターンを出力してみました。ほぼ隠れる地紋印刷ができましたが、(1)OJP8500より背景濃度が少し薄く、(2)パターン部のドットや斜め線に等間隔の斑がある事を含めてパターン部がわずかに濃いため、パターンが若干背景より濃い状態でうっすら見える結果となりました。また白抜き文字の品質が今一つ劣ることと背景とのコントラストが下がった事も相まって、読み辛い状況でした。このことからもプリンタによって背景やパターンの濃度設定のあわせ込みが必要なこと、および白文字は使用場面がかなり制限されることが分かります。
やや意外でしたが、総合評価としてOJP8500の出力結果の方が圧倒的に綺麗でした。なお、LBP-840の出力では印刷品質設定として[解像度]:ファイン(600dpi)/クイック(300dpi)、[目的]:文書・表/DTP/写真画質を試しました。クイックの品質は論外。ファインの結果としては先の通りですが、[目的]の3種類の設定差は全く感じませんでした。スーパーファイン(1200dpi)は搭載メモリの都合で試していません。
補足2 (2012-03-07):
ちなみに、上述した方法で作成したWord文書をPDF変換した場合、PDF Writerの設定や性能によって濃度が変化する点に注意が必要です。また仮に濃度などに問題がなくても、そのPDFの印刷を第三者に任せてしまった場合には、印刷時の縮尺(明示的に50%などにする場合の他に、用紙サイズに合わせるなどの設定)や印刷時にプリンタの都合などで画像として印刷などの操作をされた場合に、地紋機能が発揮できなくなる点にも注意が必要です。つまりPDFにした場合でも印刷は作成者または作成部門で行わないと地紋の機能を果たせない可能性が高いということです。
補足3 (2012-03-07):
作成したマクロは「1ページ分だけしか地紋を生成できない」のですが、もともと市販品や注文品の地紋入り用紙に印刷する状況があることを考えれば、それぞれの文書の背景に地紋を生成して印刷することが必須ではない事に気付きました。つまり手間とインク/トナーコストは多少掛かるかもしれませんが、(1)自分で作成した地紋を必要な枚数だけの用紙にまず印刷し、(2)その用紙を再度給紙トレイにセットして任意の文書を印刷すれば、理屈上は地紋入りの文書が出来上がります。もちろん地紋部分を白く抜く白抜き文字は実現できなくなりますが、白抜き文字は一般的ではないのでそれほど問題とはならないでしょう。これなら1ページ分しか地紋が作成できない手抜きマクロでも実用性が見出せそうです(欠点を前向きに考えてみました。物も言い様ですか…苦笑)。
さて、こういう手抜きマクロが欲しいという方はいらっしゃいますかねぇ?